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警備員の労災について|労災事故の対処法や事故を防ぐ取り組みについて解説

警備員の労災について|労災事故の対処法や事故を防ぐ取り組みについて解説

警備業務は夏場の屋外や道路上で行うことがあり、安全対策をしていても疾病やけがなどが発生する場合があります。

警備員にも労災が適用されるので、業務中や業務に関係することで発生した被災について補償する必要があります。

この記事では、警備員の労災について、労災保険の適用や事故が発生した際の対処法について解説します。

警備業の労災は業務契約によって異なる

警備業の労災は業務契約によって異なる

警備員にも労災は適用されますが、警備会社と依頼主どちらの労災保険が適用になるかは契約形態によって異なります。

労災保険の制度と適用について解説します。

労災保険や制度について

労災保険とは、勤務中や通勤中のけがに対して補償される制度で、警備員も労災保険の対象です。業務に関係のあることが原因で起きた事故や疾病(労働災害)に対し、事業者が補償をすることが労働基準法によって義務付けられています。

また、補償を受けるために、被災の内容が「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの条件を満たしている必要があります。

業務遂行性とは業務中に発生した被災のこと、業務起因性は業務に関連していることが原因の被災のことです。勤務中だけでなく、勤務中の被災も補償の対象となります。

委託契約の場合は警備会社の労災保険が適用

警備会社と委託契約をして警備員を配置している場合は、警備員の被災については警備会社の労災保険が適用となります。

委託契約の場合、警備員に対して指示を出すのは警備会社です。警備中に起きた被災についても警備会社が責任を負い、補償を行います。

請負契約の場合は現場会社の労災保険が適用

警備員と請負契約を結び、警備業務を依頼している場合、警備員の被災については現場会社の労災保険が適用となります。

ただし、請負契約の場合、現場会社と警備会社どちらの労災保険が適用になるかは判断が難しい場合もあるので、専門家に確認しておくのがおすすめです。

警備業界の労災事例と労災事故が発生した場合の雇用主の対応

警備業界では、転倒や火災、転落といった労災事故が多く発生する傾向にあります。

警備業界の労災事例と、労災事故が発生した場合の対応について解説します。

警備業界の労災事例

警備業では、毎年一定数の死傷者数が発生しています。厚生労働省の調査によると、過去3年間の警備業の死傷者数は以下のようになっています。

  • 2022年:1,930人
  • 2021年:2,059人
  • 2020年:1,792人

参照:労働災害発生状況

警備業における死傷災害の種類としては、「転倒」「火災」「墜落・転落」などが数多く発生しています。

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、以下のような警備員の労災事例が公開されています。

  • 交通警備員が倒れ、意識不明の状態になる
  • 道路工事での警備でドラグ・ショベルにひかれる
  • 屋上の駐車場で自動車専用エレベーターに誘導中に転落

参照:職場のあんぜんサイト

労災事故が発生した場合に雇用主がすべきこと

労災事故が発生した際は、まず警備員を救護したうえで、警察や労働基準監督署、家族への連絡が必要です。また、かかった治療費について被災者が労災申請を行うサポートをする必要があります。

労災事故が発生した場合に、雇用主がすべきことについて解説します。

労働基準監督署や警察への対応

まず被災者を救護し、治療を行うため乗用車や救急車で病院に搬送します。基本的には最寄りの労災指定病院に搬送しますが、難しい場合は一般の病院に搬送します。

また、労災事故が大規模なものである場合は警察への通報も必要です。労働基準監督署にも連絡し、指示をあおぐ必要があります。救護・搬送を終えたら被災者の家族にも連絡をします。

被災者が休業、または死亡した場合は、労働基準監督署に労働者死傷病報告の提出が必要です。

被災した労働者や遺族への対応

労災保険の請求は基本的に被災した労働者自身が行いますが、会社が積極的にサポートすることが重要です。また、警察や労働基準監督署による聴取が行われる可能性があるため、できるかぎり被災者本人や関係者に聞き取りをし、事実関係を記録しておくことも重要です。

被災者が死亡した際は、遺族への説明を誠実かつ積極的に行いましょう。労災請求のサポートを積極的に行うことも重要です。慰謝料に関する補償交渉については、弁護士に依頼することが推奨されます。

労災申請への対応

労災指定病院の場合、以下の流れで請求手続きが行われます。

  1. 被災者が「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を作成
  2. 会社が証明事項を記載し、押印
  3. 受診した労災指定病院に書類を提出
  4. 労災指定病院から労働基準監督署に書類を提出
  5. 労災指定病院に対し治療費が支払われる

労災指定病院以外の場合は、以下の流れで請求手続きが行われます。

  1. 被災者が治療費を立替え
  2. 被災者が「療養補償給付たる費用請求書(様式第7号)」を作成
  3. 会社、病院が証明事項を記載
  4. 労働監督署に書類を提出
  5. 被災者に治療費が支払われる

病院を受診した際、健康保険を使ってしまう可能性がありますが、治療費支払いの手間が余計にかかってしまうので健康保険を使わないよう周知しておくことが重要です。

また、労災指定病院以外の病院の場合、様式第7号の請求書にレシートや領収書の添付が必要となるので、必ず取っておくよう周知しておきましょう。

雇用主が確認すべき警備業務中の労災事故を未然に防ぐポイント

雇用主が確認すべき警備業務中の労災事故を未然に防ぐポイント

労災事故が発生した場合の対処法について知っておくことも必要ですが、そもそも事故や疾病が発生しないよう未然に防ぐ取り組みが重要です。

雇用主が確認しておくべき、労災事故を未然に防ぐポイントについて解説します。

安全衛生教育を徹底する

労災事故を未然に防ぐために、警備員に対する安全衛生教育を徹底することが重要です。

一度教育を受けたとしても、時間の経過とともに記憶が薄れることもあります。定期的に安全衛生教育を行い、警備員に注意喚起しておきましょう。

実際の労災事例も紹介し、具体的な対策のポイントを共有することも重要です。

警備員に対する安全衛生教育は、厚生労働省のマニュアルを参考にするのも1つの方法です。

未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル(警備業編)

従業員の過重労働を防ぐ

警備員に疲労がたまっていると、つい安全確認を怠ってしまったり、不注意から転倒・転落してしまったりする可能性があります。また、業務中に過労で倒れたり熱中症にかかってしまったりするおそれもあります。

警備員の過重労働を防ぎ、体調や集中力に配慮することが労災事故予防のポイントです。

現場に足を運び、定期的な注意喚起を行う

安全対策を警備員まかせにしていると、対策が不十分だったり認識違いがあったりした場合でも発覚しにくくなります。

実際に現場に足を運び、警備員に対して定期的な注意喚起を行うのも事故予防として効果的です。

まとめ

警備業務は路上や屋外、屋上の駐車場のような高所で行うことがあります。警備員の安全確保に十分注意し、万が一労災事故が発生した際は迅速に警備員を救護することが重要です。

労災保険の請求は被災者自身が行いますが、会社が積極的にサポートする必要があります。

また、労災事故を未然に防ぐ取り組みができているかについても事前に確認し、定期的な注意喚起や安全衛生教育を行うことをおすすめします。