コラム
警備員に残業代は必要?残業代のルールと計算方法を解説
警備業務は、現場の状況によって勤務時間が長引いたり、夜勤が発生したりする可能性があります。その場合、残業代や深夜料金を支払う必要があるかどうか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、警備員にも残業代が必要です。ただし、警備内容によっては残業代の割り増しが不要になる場合があります。また、警備業務は変形労働制に該当するので、一定期間内であれば1日8時間を超えて勤務させてもよいとされています。
この記事では、警備員の残業代や変形労働制について解説します。警備員を依頼する際の参考にしてみてください。
目次
警備員の残業代ルールとは
イベントや交通誘導では、現場の状況によって警備の時間が長引くことが想定されます。「残業が発生したら警備員に残業代を支払う必要がある?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、警備員にも労働基準法が適用されるので、残業代が必要です。ただし、警備内容によっては残業代の割り増しが不要になる場合があります。
警備員の残業の考え方について、以下より解説します。
警備員にも労働基準法が適用される
警備員の残業(時間外労働)については、会社員などと同様に労働基準法が適用されます。
労働基準法では、1日8時間・週40時間を超えて労働した場合、超過した時間は「残業」となり、残業代が発生すると定められています。残業代は割り増し賃金として、基礎時給の1.25倍〜1.6倍の賃金となる計算です。
ただし、「監視労働・断続的労働」にあたる業務の場合は、残業代は必要ですが残業代の割り増しが不要になります。依頼した警備業務が「監視労働・断続的労働」にあたる場合ので、残業代の割り増しは不要です。
監視労働・断続的労働にあたる具体的な業務内容ついて、次の章で解説します。
「監視労働・断続的労働」にあたる警備業務
警備業務が監視労働・断続的労働にあたる場合は、残業代の割り増しが不要です。監視労働・断続的労働かどうかの判断基準は、以下の通りです。
【監視労働の判断基準】
- 一定の部署で監視業務を行い、肉体的な疲労や精神的な緊張が少ない業務
- 危険のない場所での業務、またその環境が温度や湿度、騒音、粉塵の濃度などの観点において有害でない場合
- 1回の勤務の拘束時間(業務開始から終了まで)が12時間以内であること
- 次の勤務まで10時間以上の休息時間があること
【断続的労働】
- ほとんど労働する必要のない業務。かつ肉体的な疲労や精神的な緊張が少ない業務(例:定期的な巡視、緊急時の電話対応、非常事態に備えるための待機など)
- 1回の勤務の拘束時間(業務開始から終了まで)が12時間以内であること
- 次の勤務まで10時間以上の休息時間があること
労働基準監督署への申請が必要
監視労働・断続的労働に該当するためには、労働基準監督署の許可が必要です。
警備業務の内容が監視労働・断続的労働にあてはまると思われる場合でも、会社が労働基準監督署の許可を得ていない場合は、警備員の残業に対し割増賃金を支払う必要があります。
変形労働制
警備員の派遣を依頼する場合、1日に何時間稼働させればよいか、1日8時間を超えて稼働させてもよいかどうか迷うこともあるのではないでしょうか。
警備員の仕事は変形労働制に該当し、一定期間であれば1日8時間を超えて稼働してもよいとされています。変形労働制とは、特定の期間において週の労働時間の平均が法定労働時間である40時間以内におさまる場合、1日8時間・週40時間を超えて労働させてもよいとする制度です。
ただし、「監視労働・断続的労働」以外の警備業務の場合、残業代は割り増しで支払う必要があります。
仮眠時間や待機時間の賃金
残業以外でも、仮眠時間や待機時間にも賃金は発生します。仮眠や待機中であっても、警報装置の作動や非常事態発生に常に備えておく必要があるからです。
仮眠場所や待機場所から出てはいけないといった場所の拘束があったり、電話対応や呼び出しが発生したりした場合も労働時間とみなされるので、賃金を支払う必要があります。
警備員の残業代を計算する方法
警備員の残業代は、以下の式で計算します。
基礎時給×割増率×残業時間
基礎時給は、「月給÷1ヶ月の平均所定労働時間」で計算します。
【警備員の基礎時給の計算例】
- 月給:25万円
- 1ヶ月の平均所定労働時間:180時間
- 基礎時給:約1,388円
残業代の割増率は、「時間外労働」「法定休日労働」「深夜労働」によって変化します。
- 時間外労働:1.25倍
- 法定休日労働:1.35倍
- 深夜労働:1.25倍
- 時間外労働+深夜労働:1.5倍
- 休日労働+深夜労働:1.6倍
【警備員の残業代の計算例】
時間外労働が3時間の場合
1,388円×1.25×3時間=5,205円
まとめ
警備員が残業した場合、割り増しをしたうえで残業代を支払う必要があります。「監視労働・断続的労働」の場合は割り増しが不要ですが、勤務した分の賃金は支払う必要があります。また、「監視労働・断続的労働」に該当するためには、会社が労働基準監督署から許可を得ている必要があるので注意しましょう。
残業代の割り増しは、時間外労働以外にも、法定休日労働や深夜労働などによって割増率が異なります。想定以上に人件費がかかることもあるので、警備を依頼する前に、残業が発生する可能性について警備会社に確認しておくことをおすすめします。